コラム

上位合格して気づいた誰も教えてくれなかった本当の勉強法(司法試験・予備試験)by矢島直(司法試験講師)

司法試験に上位合格して気づいた誰も教えてくれなかった本当の勉強法を紹介する。
① 入門期
② 短答突破目標期
③ 論文突破目標期
の三つに分けて簡単に説明したい。

●結論

➊入門期:とにかく簡単な入門書を読んでみよう。
❷短答突破期:呉基礎本と合格セレクションを往復すれば合格。独学で十分。
❸論文突破期:①予備校の短文事例問題集②過去問の習得に尽きる。


➊入門期:これから勉強を始めようとしている人へ

(1) 分からなくてよいから、過去問をみてみよう
これから司法試験・予備試験に臨もうとするなら、まず「過去問」をみて欲しい。六法を開いたことなくてもかまわない。憲法読んだことなくてもかまわない。何もわからなくてよいから、過去問を見ることから初めて欲しい。「スタート」地点についたあなたが最初にすべきことは、辿り着くべき「ゴール」地点をみることである。

短答式
(出典:法務省ウェブサイト:https://www.moj.go.jp/content/001372546.pdf)

上記は、令和4年の短答式試験の問題である。どんな問題かイメージを掴むことができれば十分である。論文問題も法務省のWEBサイトに掲載されているので確認して欲しい。
✕ 勉強してから過去問
〇 過去問みてから勉強

(2) まずは簡単な入門書を読んでみよう。
過去問をざっと確認したら、次に「とにかく簡単な入門書」を読んでみて欲しい。本格的な勉強のスタートである。色んな良い本があるが、「伊藤真の入門シリーズ」あたりから始めれば無難だと思う。とにかく簡単な本を選ぶのがコツである。その後で、もう一回過去問を見て欲しい。解けない、しかし、「本になんか書いてたかも」ぐらいの感覚は得られるのではないかと思う。勉強がうまく進んでいる証拠である。
〇「初めての○○」、入門書
✕ 基本書、予備校講座セット150万円

(3) 閲覧注意!入門段階で大部分が振るい落とされる。
ありがちなのが、何も考えず予備校講座セット150万円を購入してしまうケース。高額で変更できない。実はこの選択肢を誤ることで「入門段階で振るい落とされる」ことになる。誰も教えてくれないだろうから、本音で警告している。
講座選び・教材選びは合否に直結する、ということを肝に銘じて欲しい。
〇 予備校講座は慎重に判断する
✕ まず予備校講座セット150万円に課金する

❷短答突破目標期:本格的な勉強の開始

(1) 過去問が全て
短答式突破のコツは、過去問、である。これが全てである。正直、過去問だけで勉強できるなら、それでも合格できる。
〇 過去問を最優先する
✕ 過去問を後回しする

(2) 過去問集のオススメは合格セレクション
各予備校が過去問集を発売しているが、オススメは合格セレクションである。重要問題が厳選されており、効率的な勉強が可能となっている。
以下は合格セレクションからの引用。
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司法試験・予備試験の短答式試験の受験生が多く正解した問題を厳選。試験合格のために必要な知識を身につけられる過去問題集。
問題のランクは以下の3つに分かれています。
(1)フル問題:司法試験受験生の正答率80%以上、予備試験受験生の正答率65%以上の問題。試験合格のためには解けなければならない問題。
(2)CORE TRAINING:合格に必要十分な点数(得点率70%)をとるためには正解したい問題。
(3)CORE PLUS:短答式試験に必要な知識を図表化。汎用性のある知識を身につけられる。
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〇 合格セレクション
✕ その他

(3) インプット教材はあった方が良い
「過去問」が大切なのは間違いないが、インプット教材を使用した方が良い。六法・判例六法・短答六法・基本書・予備校教材なんでも構わない(推奨教材は下記(5)参照)。過去問だけで学ぶと断片的になりがちな知識を、教材で整理することで効率よく勉強できる。合格セレクションには、短答式試験に必要な知識が図表化されたCORE PLUSが付いているので、活用すると良い。
〇過去問に加えてインプット教材も活用する
✕過去問だけ

(4) 時間はかかるけど、インプット教材と過去問の往復、が近道
インプット教材を「ざっと」読んだら、過去問を解くと良い。逆に、過去問を解いたら、聞かれていることを適宜インプット教材で確認すると良い。インプット教材と過去問の往復である。時間はかかるけど、この方法が王道だと思っている。テスト直前にインプット教材をざっと読み直して試験に行くイメージである。
〇インプット教材と過去問を往復する
✕インプット教材を読んで覚えようとする。インプット教材に時間をかけすぎる。

(5) オススメのインプット教材
オススメのインプット教材は、伊藤塾のエース講師、呉先生の基礎本である。書籍として普通に販売されているため、購入して自分でざっと読んで短答過去問と往復するのが基本戦略となる。「聞くより読む方が早い」ので、本を読むことが苦手でないなら、独学がオススメである。予備校派なら講義を聞くのも有力な選択肢の一つである。なお、基礎本が出版されていない科目については、決定打となる本がない状況である。
〇(独学派)呉・基礎本、(予備校派)司法試験入門講座 呉・基礎本クラス
✕ その他

❸論文突破目標期:最難関の壁をいかにして突破するか

(1) 論文突破必須アイテムは、①予備校の短文事例問題集と②過去問である。
ア 予備校の短文事例問題集は、論文マスターか重問
論文式突破のコツは、①予備校の短文事例問題集と②過去問である。残念ながら、予備校への課金は必須である。当然、①と②は、実際の答案形式で書かれた模範解答例を手にいれる必要がある。
オススメは、伊藤塾の論文マスターとアガルートの重問である。一長一短がある。伊藤塾の論文マスターは日本語が読みやすい上、旧司法試験・予備試験の過去問で構成されており勉強効果が高い問題が厳選されている。一方でアガルートの重問は論点の網羅性が高い。マイナー論点が出題されがちな予備試験で、重問の方が有利と思われる問題のときもある。勉強が得意で自信があるなら重問、それ以外の人は論文マスターが良いと思う。
〇 伊藤塾の論文マスター、アガルートの重問
✕ その他
イ 過去問の模範解答例を手に入れる
予備校が出している模範解答例を手に入れる必要がある。市販のものでも良いが、柱となる教材なので、お金があるなら予備校の講座を購入するのも選択肢の一つにいれたい。解答例の質が勉強に与える影響はかなり大きいと思われる。
〇 過去問の模範解答例を手に入れる
✕ 出題趣旨・採点実感・再現答案で満足する

(2) 論文の勉強の基本は、①問題を読む②答案構成する③答えを読む、の繰り返しである。
論文の勉強の基本は、①問題を読む②答案構成する③答えを読む、の繰り返しである。答案を書く必要はない。「毎日答案を書くことが大事」という意見には個人的には反対である。それより質の良い問題と答案例にたくさん触れることが大切だと思っている。逆に、答案構成程度の思考時間は設けて欲しい。考える工程をいれることで、自分の思考や知識の抜けを自覚することができ、答案を読んだときに得られる効果を高めることができるからである。予備校の短文事例問題集と過去問でこれを繰り返せば力はつくはずである。
〇 ①問題を読む②答案構成する③答えを読む
✕ 毎回答案を書く、考える時間を設けない

(3) 答案の型の習得に力を注ぐ
答案作成のコツは答案の型を習得することである。勉強を始めた人はわからないかも知れないが、答案には「型」が存在している。自由に書いているようで、合格者は、実は「型」にはめて書いているだけだったりする。個別指導、予備校講座など活用して欲しい。ちなみにBEXAで「合格答案術」という講座で答案の型を説明している。実践編まで購入してもらえれば、確実に力がつくと思う。論文の勉強を始める前に是非。
〇 答案の型を習得する
✕ 毎回自由に書く

(4) 作成した答案は個別指導などで見てもらうと良い
(2)で述べたとおり、答案を毎日書く必要はないが、最低限の起案練習はした方が良い。起案練習の必要量は、今までの勉強経験・文章作成経験などにもよるからなんとも言えない。作成した答案は個別指導などで見てもらうと良い。初心者こそオススメである。「厳しい時間制限の中、限られた知識で、合格答案を書く」コツは、上位合格者などから学ぶのがやはり効率が良い。上位合格者は「試験テクニック」を熟知していたりする。「才能」みたいな言葉に騙されてはいけない。「所詮、試験テクニック」と良い意味で難しく考えないことが大切である。なお、STUDY-FOR-ALLで、私も個別指導を行っている。月2万円(1回1時間で月2回)を基本コースにしている。興味あれば、勉強相談を申し込んで相談してみて欲しい。
〇 答案について個別指導などでアドバイスをもらう
✕ 第三者にアドバイスをもらわず、一人で勉強する

最後に

以上、オススメの勉強法について解説した。非常にシンプルな方法だったかもしれない。しかし、実際に実行すること、習得することは容易なことではない。大変だとは思うが、応援している。皆様の合格に少しでも寄与できればそれに勝る喜びはない。必勝祈願!

執筆者:矢島直(詳細を見る)

  • 司法試験講師。司法試験は公法系6位、民事系35位、総合50位で1回目合格。予備試験も合格。「努力する全ての人の夢を叶える」が講師理念。 BEXAでも講座販売中。